人工関節手術のメリットと合併症
人工関節手術のメリット
関節にとって大切な『 1.痛くない』『2.動かせる』『3.支えることができる』 の3つの要素を回復させる治療が行なえます。
また他の手術法(骨切り術など)に比べて治療の効果が確実で、治療期間も短く、股関節、膝関節の場合3~4週間程度の入院で可能です。
また他の手術法(骨切り術など)に比べて治療の効果が確実で、治療期間も短く、股関節、膝関節の場合3~4週間程度の入院で可能です。
人工関節手術の合併症
具体的には以下の点を挙げます。
出血
初回の手術であれば、術前自己血貯血などにより、他家血輸血(他人からの輸血)はほとんど回避できます。
ただし、貧血があるとか止血機能(血が固まる機能)に異常がある場合は、他家血輸血が必要になります。生命維持のために輸血が必要なことがあっても、C型肝炎の検査が行き届き、以前のような輸血後肝炎などが激減し、他家輸血の安全性は極めて高くなりました。
ただし、貧血があるとか止血機能(血が固まる機能)に異常がある場合は、他家血輸血が必要になります。生命維持のために輸血が必要なことがあっても、C型肝炎の検査が行き届き、以前のような輸血後肝炎などが激減し、他家輸血の安全性は極めて高くなりました。
感染
人工関節が細菌感染(化膿)すると、人工関節を抜去して細菌を薬などで完全に殺して再度人工関節をとりつけないといけないことがあります。しかしながら、一般に予防措置を施した場合、0.2%以下で、極めてまれです。また、術後数年経過してから細菌が血液から運ばれて起こす遅発性感染があります。歯科処置による血液内への口腔内細菌進入を心配する医師もいますが、人工関節の口腔内細菌による感染は極めてまれで、歯科処置時に抗生物質を使用することの利点と副作用を考慮すると、抗生物質を服用は勧められないとされています。
骨折
手術の際、骨が脆いと、骨を削ったり人工関節を取り付けたりする際にひび割れを含めた骨折をおこすことがあります。人工関節を取り替える再置換術には起こりやすいのですが、ワイヤーやスクリューなどで補強することで人工関節の固定に問題を生じないようにできます。ただしリハビリテーションでは、足を踏ん張って体重をかけ出す時期が遅れることがあります。
脂肪塞栓
骨髄には脂肪組織があります。骨髄を含めた骨を削る際に静脈に削り取られた骨髄組織が流入し、静脈から心臓を通って肺につまります。量が少ないと、何も問題はありませんが、肺が結核や癌に犯されて機能に余力がないとき、循環不全で死にいたることが報告されています。幸い日本では、セメントを使わない人工関節で死亡例の報告はありません。セメントを使用する際に十分骨髄を吸引していれば肺塞栓量を減らすことができます。
静脈血栓肺塞栓症
術後に下肢の静脈に血の塊が生じ(深部静脈血栓症)、はがれると心臓を通って肺につまり、血栓肺塞栓症を起こすことがあります。症状のでる肺塞栓の頻度は0.1%以下ですが、血栓の既往のある人では十分注意が必要です。術後下肢静脈の血の流れを速くするような装置や運動、早期に運動を開始するなどの予防法を行います。 また、場合によっては、一時的に血液が固まりにくくする抗凝固薬を使用することで静脈血栓を予防します。
脱臼
人工関節は、元来手術中に股関節を脱臼させて、骨盤と大腿骨に部品をとりつけ、整復(もとにもどす)しています。各部品同士は磁石のような吸着力はなく、関節包(関節を包むふくろ)や筋肉ではずれないように安定しています。術後早期は、この関節包や筋肉の支えが弱く、ある特定の危険な格好をすると脱臼することがあります。術後半年脱臼しなければ、それ以降は脱臼することは極めてまれです。手術の際に切開する場所(進入法)、人工関節のデザインや取り付け角度、骨格の形によって脱臼し易さは異なりますので、詳しくは主治医と相談してください。
脚長差
人工関節は、元来正常な股関節の形を模して設計されていますので、股関節の病気で足が短くなっている場合は、手術により足が長くなります。反対側の股関節が正常またはすでに人工股関節手術がされている場合は、脚長差が減ることになりますが、逆に、反対側が病気の場合は人工関節をした方の足が長くなり、靴(補高)で調整が必要になることがあります。
人工関節の摩耗や折損、ゆるみ
人工関節が長期に渡って体重を支え続けていますと、摩耗や折損、摩耗粉による異物反応での骨溶解を起こすことがあり、部品交換の手術が必要になることがあります。しかしながら、最近の人工関節の材料やデザインの進歩で、かなり摩耗しにくく固定性のいい人工関節が登場していて、阪大では過去の実績で10年で98%、20年で90%ぐらいは再置換せずに機能しています。詳しくは主治医に尋ねてください。
高齢や合併疾患にともなうリスク
心筋梗塞、狭心症、喘息など、他の内科的病気のため、麻酔をかけるだけでも危険なことがありますので、術前に精査が必要です。